諸君。私は藤木俊先生の漫画が好きだ。
諸君。私は藤木俊先生の漫画が大好きだ。
壊し屋が好きだ。悪の組織が好きだ。正義の味方が好きだ。2人しかいない演劇部が好きだ。超新聞部が好きだ。透視能力者が好きだ。
藤木俊先生の描く、シリアスはあっても、どことなくゆるい世界観が大好きだ。
秘書や部下にボロクソに言われながらも、社長として、一家の大黒柱として、一人前に成ろうと努力する主人公が好きだ。
どんなにボロボロになっても「突貫!」と苦難を乗り越える姿は、見ていてとても清々しい気持ちになる。
一般社会に適応しようと七転八倒する悪の幹部が好きだ。
頑張った結果、結局ヒロインを恥かしめて蹴り転がされる姿はただひたすら面白い。
ノー天気で元気いっぱいに女優を目指す演劇部員が好きだ。
彼女が決して表には出さない苦労や苦悩を知った主人公が、舞台の上でお礼を言う姿は正に感動ものだ。
学年トップの座を奪われたヒロインの、理不尽な恨み辛みに動じない主人公が好きだ。
透視能力で見た宇宙の壮大さには只々圧倒された。私も実際に見てみたい。
取材と称されてセクハラされまくる気弱な女子柔道部員が好きだ。
なんだかんだ言っても、彼らのお陰で試合に勝てるようになったものの、結局は最後まで弄り倒される姿など絶頂を覚える!
では、どん兵衛を食いながら登場するヒキオタニートな天照大御神はどうだろう。
スケベという以外、特にこれといった特徴がなかった主人公はどうだろう。
ほのぼの日常系にも、学園コメディにも、バトルものにも成らず、中途半端感が否めない物語はどうだろう。
私は好きだと言えるだろうか?
汚部屋に引き篭もる神様が可愛いと言えるだろうか?
姉の暗殺を目論む割には、アッサリと仲良くなる黒幕という展開が面白いと言えるだろうか?
答えは YES だ。
確かに、手放しに面白いと褒めれない部分はあったし、打ち切りとわかった時に「あぁ、やっぱり」と素直に受け入れる程度には覚悟がきまっていた。
沢山の登場人物が登場したが、キャラの掘り下げが十分ではなく、それぞれのキャラにイマイチ感情移入できなかったのは残念だったし、てらす様はダメさアピールが効き過ぎてしまい、ヒロインとして大切な愛嬌が欠けてしまったと言わざる得ない。
それらのダメな部分は、連載打ち切りという事実が証明している。
それでも、他人のために怒れるコーヘイはしっかりと主人公していたし、内面と外面のギャップが激しいツクヨミ様の一挙手一投足は、ずっと見ていたいほど微笑ましかった。
てらす様に至っては、時折見せる素直さや笑顔の破壊力は抜群だ。
元々、藤木俊先生の漫画が好きだという贔屓目があるのは認めよう。
だが、それらも引っくるめて『だめてらすさま。』は好きかと聞かれれば、自信を持って「YES!」と答えよう。
たった3巻で終わってしまった事が残念で仕方がない作品だったと思う。
もしかしたら、人間不信から回復したてらす様が、コーヘイと一緒に学校生活を謳歌する青春ラブコメに発展したかもしれないし、逆に学園要素を切り捨てて、温泉宿を守る為にコーヘイとてらす様が悪戦苦闘する宿屋経営マンガが始まっても面白かったかもしれない。
藤木先生のバトル描写も迫力があるから反高天原勢力と大立ち回りするバトルマンガ展開も十分いけたと思う。
最終局面辺りで時の流れを操る者同士のコーヘイvsツクヨミ戦が起これば、色んな意味で熱い展開が待っていたに違いない。
……だが、現実は厳しく、それらの可能性は潰えてしまった。
それでも、たった3巻の中に引き篭もりのダメニート神に纏わるエピソードはしっかりと完結している。
よくある打ち切りENDで物語を終らせずに、ちゃんとハッピーエンドを描いてくれた。
自分はその事に感謝したい。
短い連載だったけど、この後も皆が相も変わらずにドタバタしていく未来が垣間見れた。
そんな自分が好きな藤木ワールドをちゃんと読む事ができたのが嬉しい。
諸君。
数多のマンガを読み歩く歴戦の読者諸君。
君たちどんな漫画が好きだろうか?
少なくとも、私の好きな漫画はここにある。